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The Return of Sherlock Holmes シャーロック・ホームズの帰還
The Adventure Of The Solitary Cyclist 孤独な自転車乗り 3
Sir Arthur Conan Doyle アーサー・コナン・ドイル
AOZORA BUNKO 青空文庫
「角を曲がってから道が無人だと気づくまでの所要時間は?」
「では相手は道を引き返せず、なおかつ横道はないとおっしゃる?」
「と、消去法でチャーリントン館へ道を取ったのが正しいことに。確か道の片側に敷地があるのでしたね。他には何か?」
「ございません、ホームズ先生。ただ何が何だかわからなくて。お会いしてご助言いただくまで心が安まらず。」
「婚約された紳士の方はどちらに?」とようやく口を開く。
「あらホームズ先生! そんなふたりが他人みたいに?」
「あの嫌らしい人、ウッドリが。仮に想い人としましたら。」
「その、これは単なるわたくしの思い違いかもしれません。ですけど時折、雇い主のカラザズさんが、わたくしにお心あるらしく思えることも。
何でも南アフリカの金鉱の株にとても興味がおありだとか。」
「ではまた何か進展がありましたらお知らせを、スミスさん。
現在は多忙なのですが、いずれあなたの件をお調べする暇もできるかと。
自然の摂理に基づけば、ああいう娘にはつきまとう男がいるものだ。」とホームズは瞑想用のパイプを取り出す。「しかしわざわざひとけのない田舎道で自転車に乗ることもないだろうに。
にしてもこの事件には奇妙な裏がありそうだ、ワトソン。」
「まさしく。僕らのまずやるべきは、チャーリントン館の居住者が何者か探ることだ。
それからまた、カラザズとウッドリはどういう関係なのか。どうもこれほど性格が異なっていてはね。
そもそもどうしてこのふたりがラルフ・スミスの親類を探し出そうと躍起になったのか。
さらにもうひとつ。家庭教師に相場の二倍払いながらも馬一頭もないとはどういう家計になっているのか。駅から六マイルもあるというのに。
案外ちんけなたくらみかもしれぬし、そのために他の大事な調査を中断するわけにはいかない。
月曜の朝、ファーナムへ行って、チャーリントンの荒れ地近くに身を隠してくれたまえ。実際にその目で確認したら、あとは自分の判断で動くこと。
それから館の住人についても調べた上で、帰って僕に報告を。
さてワトソン、話はここまでだ。何か足がかりでも見つけて、解決へと向かえでもしないかぎりは。」
Copyright (C) Sir Arthur Conan Doyle, Otokichi Mikami, Yu Okubo