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The Case-Book of Sherlock Holmes シャーロック・ホームズの事件簿
The Adventure Of The Sussex Vampire サセックスの吸血鬼 5
Sir Arthur Conan Doyle アーサー・コナン・ドイル
AOZORA BUNKO 青空文庫
スパニエル犬が一匹、隅のかごで横になっていた。のろのろと主人へと近づくが、うまく歩けていない。
まあ治まりつつあるので、じきに治るでしょう――だな、カーロ?」
先生にはほんの知的なパズルかもしれませんが、私には生きるか死ぬかなんです!
家内が殺人鬼になるかもしれない――息子は今も危険なんです! もてあそばずに、ホームズ先生、事は深刻なんですよ。」
「僕はね、ファーガソンさん、何であれ解決そのものがあなたの苦しみになるやもと心配で。
さしあたり申し上げられるのはこれのみですが、この館を発つ前にははっきりとした事もつかめるかと。」
すいませんが、みなさん、私は家内の部屋へ行って、変わりないか確かめなくては。」
依頼人が数分不在のあいだ、ホームズは再び壁の珍しい品々を調べ出す。
やがて戻ってきた屋敷の主人だったが、思わしくない顔を見せたので、進展がなかったに違いない。
ただ連れてきた人物がひとり、長身細身の小麦肌の娘だ。ファーガソンは言う。
「あの方、具合、悪い。」と声を上げる娘は、屋敷の主人を責めるような目で見つめていた。
「何も、食べない、言う。具合、悪い。医者、見せる。
ファーガソンが私の方へ、何か訴えるように目を向ける。
「わたし、連れてく。ほっとけない。医者、見せる。」
私はその娘についていった。その子は感情の高ぶるあまりふるえていた。階段をのぼり、古い廊下を奥へ。
これでは、さしものファーガソンでも妻のところへたやすくは押し入れない、本人もそのことに気づいただろう。
娘が懐から鍵を取り出すと、厚く重い楢板が蝶番をきしませる。
私が入室すると、うしろから娘も滑り込み、後ろ手に扉の錠をかける。
Copyright (C) Sir Arthur Conan Doyle, Yu Okubo