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The Adventures of Sherlock Holmes シャーロック・ホームズの冒険
The Red-Headed League 赤毛組合 6
Sir Arthur Conan Doyle アーサー・コナン・ドイル
AOZORA BUNKO 青空文庫
住所は聞いていますから。……ええと、キング・エドワード街ですから、聖《セント》ポール大聖堂の近くですね。』
わしは向かいましたよ、ホームズさん。でも、その住所には膝当ての製造工場があるだけで、ウィリアム・モリスもダンカン・ロスも、誰一人として知っちゃいませんでした。」
「それからどうなさいましたか?」とホームズは先を促した。
「サックス・コバーグ・スクエアの家へ帰りました。うちのあれに相談してみたんですけどね、
ただ、待っていれば手紙でも届きますよ、旦那、ってそれだけ言うんです。
ホームズさん。こんな……仕事がふいになろうっていうときに、手をこまねいてなんかおられんのです。だから……だからですよ、あんたが困った人の相談にちゃんと乗ってくれる、ちゃんと手助けしてくれる、っていう人だと聞いていたからですね、わしは一目散にやってきたわけなんですよ。」
「たいへん賢明です。」ホームズはウィルソン氏にそう答えた。
「あなたの事件は、常識の域を超えた事件――喜んで調査しましょう。
話から察するに、見かけによらず、たいへんゆゆしき問題となりそうです。」
ジェイベス・ウィルソン氏は熱くなり、「ゆゆしき……ああもちろん!
ホームズはウィルソン氏の態度にたいして、こう意見した。「あなた個人として、その異常な連盟に不満を抱く、それは筋違いというものです。
僕なら逆に、ざっと三十ポンドは得をした。Aの項、全ての記事を詳細な知識として手に入れただけでも充分なのに、と、そう理解しますね。
連盟からは、失ったものより得たものの方が多いはずです。」
「そうかもしれませんが、ホームズさん。わしはやつらを見つけだしたいんですよ。何者で、どうしてわしにあんないたずらを……もし、もしいたずらとしたらですよ、その目的が知りたいんです。
まぁ、いたずらにしちゃあ金を使いすぎですがね。わしに三十二ポンドも使ってるんですから。」
「そういう点は、骨折って明らかにして差し上げます。
しかしその前にウィルソンさん、二、三お尋ねしたいことがあります。
最初に広告を見せに来た、その店員、いつ頃から働いていますか?」
「使えそうで、それに給料は安くても構わないって言ったもんですから。」
「ヴィンセント・スポールディングの風采《ふうさい》は?」
「小柄ですが、身体は頑丈で、機敏で、三十は越しているのにヒゲもありません。
額に、酸で火傷《やけど》した白い痣《あざ》みたいなのがあります。」
ホームズは椅子から身を乗り出した。どうやら心が高揚しているようだ。
「そんなことだろうと思った。」ホームズはそのままウィルソン氏に尋ねた。
「その男の両耳、イヤリングの穴があることに気が付きませんでしたか?」
「ええ、ありましたとも。あれは言うには、若い頃、ロマにあけてもらったとか。」
「ははん!」とホームズは言い、再び物思いに沈むのであった。
「ええ、いるでしょうね。さっき店に残してきましたから。」
「あなたの留守中も、仕事に精を出しているのですか?」
今日は土曜日、ですから月曜までには解決できることと思います。」
Copyright (C) Sir Arthur Conan Doyle, Yu Okubo