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The Memoirs of Sherlock Holmes シャーロック・ホームズの思い出
The The Reigate Puzzle ライゲートの大地主 8
Sir Arthur Conan Doyle アーサー・コナン・ドイル
AOZORA BUNKO 青空文庫
警部とともに屋敷へ出向き、見るべきものをすべて見ました。
死者の傷は絶対の自信をもって断言できますが、四ヤードは離れて撃たれたものです。
よって明らかに、アレク・カニンガムは嘘をついています。ふたりがもみ合いのさなかに撃たれたというあの発言です。
さらに、親子の発言は男が道に逃げた地点でも一致してました。
しかしその地点には、あいにく底のぬかるんだ広めの側溝がありました。
その溝のあたりに靴の跡らしきものがないことから確信できます、カニンガム親子はまたも嘘をついたばかりか、現場に謎の男などひとりもいなかったのです。
となれば、この妙な犯罪の動機を考えねばなりません。
これに迫るため僕がまず解決しようとしたのが、先のアクトン氏のお宅への押し込みの理由です。
大佐の話してくれたことから、こちらのアクトンさんとカニンガム家のあいだで裁判沙汰が続いていることは知っていました。
むろんすぐに浮かんだのが、書斎に侵入して、訴訟で大事になりそうな書類でも盗るつもりだったのか、ということです。」
向こうの現地所の半分について、わしには明白な請求権がある。もしやつらが一枚しかない書類を見つけようものなら――幸い弁護士の金庫に入っておったが――やつらはわしの訴訟を台無しにしたに違いない。」
「これは危険で向こう見ずな企みでしたが、僕はここにもアレク青年の影がちらついていると思います。
何も見つからなかったため、ただの強盗に見せかけて疑いを逸らそうとしました。だからこそ手当たり次第に持って行ったのです。
以上のことはじゅうぶん明白ですが、いまだぼんやりとしたところも多々あります。
何よりも僕が手に入れたかったのが、この覚え書きの失われた部分です。
確かなのは、アレクが死者の手から引きちぎったことで、その化粧着の懐にねじ込んだと見てほぼ間違いないでしょう。
見つけようと骨折っただけの価値はありますし、その目的のために僕らはみんなして屋敷へ出向いたのです。
カニンガム親子が合流したところは、思い出してください、勝手口の外でしたね。
むろん一番大事なのは、この紙の存在を思い出させないこと、気づかれたら最後、きっと即座に処分されましょう。
そして僕らがそれを重要視していると警部がばらしそうになったまさにそのとき、世界一幸運なことに、僕が発作のたぐいでその場に倒れ、そして話が逸れたのです。」
「なんと!」と大佐は笑いながら声を上げる。「我らの心配も徒労で、あの発作も嘘だと言うのだな?」
「医者の身からしても、あっぱれな出来だよ。」と私はこの男を驚きの面持ちで見つめる。その立ち回りの早さでいつも煙に巻かれているのだ。
「それから元に戻すと、僕は何とか手を使って、それなりに巧みだったと思うのですが、カニンガム老人に『十二』という言葉を書かせて、そこでこの紙の『十二』と比べてみたというわけです。」
そうと知りながら君の心を痛めさせてしまって申し訳ない。
それから全員で階段を昇り、部屋に入って、扉の裏にかけてあった化粧着を見ましたので、台をひっくり返してしばらくどうにか注意を引きつけておいて、僕はこっそり戻り、懐を探りました。
ですがつかんだその瞬間――予想通り懐の片方にありはしたのですが――いきなりカニンガム親子が僕につかみかかってきて、もしかするとその場で僕は殺されていたかもしれませんね、その素早い友の手がなかったとすれば。
実際、今でもあの青年の喉を絞める手を感じますし、あの親は紙を僕の手から奪おうと僕の手首をねじったのですから、
ふたりは僕に見破られたと悟っていたようで。絶対安全から絶望暗黒へと突き落とされたのだから、完全にやけになったわけです。
あとでカニンガム老人と犯罪の動機について少し話をしました。
老人は流されやすい人物だが、息子はまったく悪の権化で、拳銃でもあれば自分含め誰彼構わずいつでも頭をぶち抜きかねません。
カニンガムは自分の立場がきわめて不利なのに気づくと、魂がすっかり抜けてしまい、何もかも白状しました。
どうもウィリアムはひそかに主人ふたりをあの夜つけたようなのです。アクトンさんのお宅に押し入ったあの夜のことです。それでばらすぞと脅し、ふたりを転がして金をせしめようとしました。
彼の才の突出したところは、この田園を揺るがす強盗騒ぎについて、脅威となる男を排除する絶好の機会だと見たところです。
ウィリアムはおびき寄せられ撃たれ、もしこの覚え書きをまるまる持ち去って、周囲のことにもう少し細かく気を配っていたなら、疑いがまったく起きないということもかなりありえたと思います。」
シャーロック・ホームズは我々の前につなぎ合わせた紙を置く。
「むろん、アレク・カニンガム、ウィリアム・カーワン、アニィ・モリソンのあいだにどんな関係があったのか、僕らにはまだわかりません。
結果が物語るのは、罠はうまくかかったということです。
必ずやみなさんもご納得されましょうが、この『こ』や『た』にも遺伝のあとが見られます。
ワトソン、思うに僕たちの静かな田舎旅行もめざましい成功を遂げた。明日は大いに元気をつけて、きっとベイカー街へ戻れるはずだ。」
Copyright (C) Sir Arthur Conan Doyle, Otokichi Mikami, Yu Okubo