※本文をクリック(タップ)するとその文章の音声を聴くことができます。
右上スイッチを「連続」にすると、その部分から終わりまで続けて聴くことができます。
※ "PlayBackRate" で再生速度を調節できます。
Episode-10 Balser's Dream(1) パルサーの夢
Episode-10 Balser's Dream (Charles Major) パルサーの夢 (チャールズ・メージャー)
AMERICAN SHORT STORIES
この小説は,ある寒い冬の夜に,パルサーが見た夢について物語っています.
バルサ一・ブレントと弟のジムは,暖かい火のそばで学校の勉強をしていました.
ブレント夫人は縫い物をしたり,赤ん坊に歌を歌ってやったりしていました.
太陽が傾くにつれて風が起こり,初めのうちは穏やかに吹いていましたが,やがて激しい風に変わりました.
彼は煙突に燃え上がる炎をながめ,外の風の音に耳を傾けていました.
「もっと薪(まき)をくべなさい,パルサー」彼の母親がやさしく言いました.
「でも赤ちゃんが寝てるから,静かにやってちょうだいね.
家の中を暖めて気持ちよくしておいてあげなくちゃね.
ブレント氏は,動物の皮を売りにブルックビルへ行っているのです.
パルサーも父親について行きたかったのですが,家にいてお母さんの手伝いをしたり,赤ん坊の世話をしたりするように言われていたのです.
パルサーは燃えさかる火の中へ薪をくべてから,ジムのほうに向き直ってひそひそ声で言いました.「さあ,牛にえさをやって,寝る支度をしてやりに行こう」
少年たちは外へ出ていって,馬と牛にえさをやりました.
2人は羊を迫って小屋に入れてから,牛の乳をしぼりました.
彼らは温かいミルクを大きなおけに4杯,家の中へ持って入ってきました.
ブレント夫人は窓越しに,深く積もった雪をながめました.
「忙しくしていなくてはいけないわ」彼女は考えました.
「心配したからって,早く帰ってくるわけじゃないんですもの」
彼女は,まず野生の七面鳥をはだか火の上で焼きました.
それから新しいラードで卵をいため,コーンケーキを作ってシロップに浮かせました.
彼女はさつまいもを焼き,パンを焼いてそれに自家製のバターを添えて出しました.
おなかをすかしていた少年たちは,母親が前に置いたものは全部平らげ,温かいミンスパイと温かいミルクも飲みました.
ブレント夫人にとっては,時間がたつのが遅く感じられました.
暖炉の上の小さな時計が時を刻みます.‥.6時,7時,8時‥‥
パルサーは火のそばに座って,本を読もうとしています.
彼は,父親に何か起こったのではないかと思うようになったのです.
彼は頭の中で,父親がおなかをすかしたおおかみたちに,雪の中で取り囲まれている光景を描いていました.
彼はやがて,まぶたが重く感じられるようになってきました.
彼の頭は,静かに後ろに垂れて暖炉の壁にもたれかかりました.
夜のやみが迫ってきました.辺りはだんだん暗くなります.
外では,降りしきる雪の中に1頭の馬が立っているのです.
この馬は,父親の荷馬車を引いている馬のうちの一頭だったのです.
パルサーは丘を駆け上がって,薪の積んであるところまで行きました.
彼は薪に火をつけました.近所の人が煙を見て,助けに来てくれることを願っていたのです.
それから彼は家へ駆けもどって,銃を取り視界のきかない吹雪の中を,父親を捜しに出かけました.
パルサーは,馬が雪の中に残した跡をたどっていきました.
あっという間に,森の中へ深く入り込んでしまいました.
1時間ばかり雪の中を苦労して進んだころ,彼の耳に,遠くでおおかみの鳴く声が聞こえてきました.
彼は,父親がおおかみたちに取り巻かれているのではないか,と心配しながら急いで行きました.
風がそれまでよりも強く吹き出しましたので,パルサーは寒くなりました.
Reproduced by the courtesy of the Voice of America