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Episode-10 Balser's Dream(2)
Episode-10 Balser's Dream (Charles Major) パルサーの夢 (チャールズ・メージャー)
AMERICAN SHORT STORIES
父親は荷馬車の上に立ち上がって,激しくつえを振り回し,とびかかってくるおおかみたちを追い払おうとしてたたいているのです.
ちょうどその時,木が見えましたので,彼はその木のところまで走っていって,よじ登りました.
彼は木の中で,月が雲の向こうから現れるのをしばらく待っていました.月が出れば,もっとよく見えると思ったからです.
パルサーは銃を構えて慎重にねらいを定めると,鳴いているおおかみの群れをめがけて発砲しました.
うなる動物の黒い群れが,たちまち死んだおおかみの上に群がりました.
もし,もう少し殺せたら,おおかみもおなかがふくらむかもしれない,とパルサーは考えました.
そうすれば,お父さんに近寄らなくなるかもしれないぞ.
彼は待ってみましたが,雲はますます厚みを増すばかりです.
パルサーは座ったまま,月の光が雲の覆いからもれてきて,もっと辺りが明るくなるようにと祈っていました.
彼のま下に,大きな黒くまが雪の中に座っているのです.
くまはおおかみたちの鳴き声を聞いてやってきたのです.
パルサーは考えました.「もし,ぼくがこのくまを殺すことができれば,この大きなくまを食べて,おおかみたちは満腹するだろう.
くまは怒りのうなりを上げながら,後ろ向きに倒れました.
パルサーは素早く弾を詰め替えます.その時彼の目に,2つの明かりが丘を越えて下りてくるのが見えました.
リンピーは片手に明るく燃えているたいまつを持ち,もう一方の手に銃を持っていました.
バルサーは大声を張り上げました.「引っ返せ!引っ返すんだ!」
少年と少女は立ち止まりません.2人は助けにきたことを知らせようとして,明かりを振りました.
おおかみたちが,木のほうへ向かって走ってくるのが見えます.
パルサーはもう一度叫びました.「引っ返すんだ,ライニー,引っ返すんだ!」
彼は動きたかったのです.叫んだり何かしたいと思ったのです.
彼は今自分がどこにいるか忘れていたために,途端に木から足を踏み外して,傷ついたくまのそばに落ちました.
彼が落ちるのと同時に,ライニーとリンピーが来ましたが,それと同時におおかみたちもやってきました.
十頭ほどのおおかみが,あっという間にブレント氏に飛びかかりました.
リンピーが撃とうとしましたが,おおかみたちはリンピーにも飛びかかりました.
その時,彼は何かに肩をぎゅっとつかまれたような気がしました….
彼は大声をあげ,笑いながら駆け出して,父親の両腕の中に飛び込みました.
『パルサーの夢』というアメリカの短編小説をお送りしました.
きょうの物語の原作者はチャールズ・メージャー,語り手はジャック・モイルズでした.
「アメリカの声」では来週もこの時間に,この特別英語による番組をお送りします.
Reproduced by the courtesy of the Voice of America