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Episode-11 Stonewall It


Episode-11 Stonewall It
WORDS AND THEIR STORIES
ことばの由来-独特なアメリカ英語表現についての番組。
アメリカ英語は、ほかの言語と同じように多くのイディオムがある。イディオムとは独特な表現方法のことである。
時としてスラングとか口頭表現とか口語表現ともいわれることがある。
イディオムを説明するのがむずかしいのは、生命そのものを説明する場合と同じである。
それこそが、ある意味でイディオムの真の姿である。つまり、言語の生きた肉であり、国民の心臓の鼓動と血行が作り上げた生きた組織なのである。
そのような表現の一つ、「妨害する」が突然息を吹きかえし、アメリカ全土にわたってとても有名になった。
この語の再誕の地はホワイトハウスで、前大統領リチャード・M・ニクソン氏によるものだった。
彼がこのことばを国中に広めたのである。
何百万ものアメリカ人がテレビで聞いたり、新聞で読んだりして知ったのは、どうやってニクソン氏が側近に妨害工作をやらせて、連邦調査官に側近のやったことの全貌をさとられないようにしたかということである。
大統領側近たちは、ウォーターゲート事件に関係しているとの容疑をかけられた。
そして告発された内容は、1972年の大統領選挙の前、および期間中における違法活動の隠ぺいを計画した、あるいは実行しようとしたということであった。
それらの違法活動には、ウォーターゲートアパートにある民主党全国委員会の本部に不法侵入したことも入っていた。
しかし、ホワイトハウス筋の「妨害工作」は失敗した。
結局ニクソン大統領は辞職し、側近の何人かは実刑判決の宣告を受けることになった。
stonewallということばは、辞書の中に残っていこそすれ、アメリカではこれまであまり使われてはいなかった。
このことばはクリケット競技から来ており、守りのゲームに徹し、ボールを止めるだけで、点数を入れようとしないプレーヤーのことをいう。
この言い回しが、どういうわけか政治用語としてオーストラリアやイギリスの政治家によって使われるようになった。
それはおよそ1880年代のことである。
あるオーストラリアの政治家たちが手厳しく非難されたのは、長々と演説して、ただ議会の議事を妨害、引き延ばしをしているという理由によってであった。
「全く妨害戦術にたけてるね」とある下院議員は他を評していった。
「何時間でもブチ続けるんだものな」
一人の下院議員が怒って、一人の議員を指さし、彼の傍らに座っている6人の議員と一緒になって石壁を作り上げ、あらゆる議事進行のじゃまをするつもりなのか、ときいた。
明らかに、このことばはあまり愉快な言い回しではない。議事妨害者と呼ばれていい気持のする政治家はいなかった。今日でも、法案通過妨害者と呼ばれていい気持のする政治家がいないのと同じことである。
両者には違いはあるが、それでも似たようなものである。
しかし"stonewall"ということばが、名誉ある呼び名だったこともあった。
アメリカ南北戦争当時、南軍の偉大な指導者の一人は「ストーンウォール・ジャクソン」と呼ばれていた。
この名が与えられたのは彼の偉大な勇気の故だった。
敵の圧力に負けず退却を拒絶し、進攻して来る北軍の前に、石壁のごとく強固に立ちふさがったのである。
しかしウォーターゲート事件によって、"stonewall"には永久に消えさらぬ汚点が残された。
あの悲劇的な事件から有名になった2つのことばは、「妨害工作をする」と「隠ペい」である。将来この2つは、何か不名誉なことをいう時に、主に使われるようになるだろう。
 
Reproduced by the courtesy of the Voice of America
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