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Episode-28 Play Possum
Episode-28 Play Possum
WORDS AND THEIR STORIES
どの国民も、独自のイディオム、彼ら独特の言い回しを発達させている。
これらの独特な表現のそれぞれにはまつわる話がある。
きょうは「死んだふりをする」という表現について話そう。意味は欺く、真実を隠すことである。
人間が動物の行動からいろいろと学んだことは、もうご承知だろう。
私たちが皆知っているように、危険が迫っている動物の行動を見ることは、たいへん興味深い。
さるは木に登り、かめは甲らにひっこみ、アルマジロは丸くまるまってしまう。
きつねは-小動物の中では最も利口だが-隠れてしまう。
それで、「他人を出し抜く」という表現ができている。
ダチョウはしかし、小さくもなく、利口でもない。驚くとばかな振舞いをする。つまり砂の中に頭をうずめるのである。
しかしふくろねずみは-"possum"ともよくいわれるが-それ特有の防衛法がある。仰向けになり、いわば死んだふりをするわけである。
ふくろねずみがこんな行動をとるのは、猟師が欲しがるのは死んだふくろねずみではなく、生きたふくろねずみだろうと考えているためだ。
しかし、その考え方が、いつも正しいとは限らないことに、もう多くのふくろねずみは気づいたはずである。
ふくろねずみは、バージニアへ来た植民者が最初に出会った野生動物の一つである。
彼らはこのちいさな動物の名前を知らなかったので、インディアンにたずねた。
植民者は、このインディアン語がうまく発音できず、"opossum"になり、後に"possum"になった。
インディアンがつけた名前は、この動物の色からであった。
このインディアン語の意味は「白い動物」であったが、ほとんどのふくろねずみは灰色っぽかった。
初期の植民者がすぐ興味を持ったのは、ふくろねずみが攻撃される時に見せる想像性豊かな行動であった。
その動物はうまい芝居を見せて、まるで死んでいるかのようであった。
地面に転がって目を閉じ、舌を半開きの口から、突き出した。
ふくろねずみは、死んだふりを続けた。犬にけられても、踏まれても、ゆさぶられてもである。
危険が去ると、それは跳び上がり、逃げ出した。そして同じ芝居をまた別の所で、別の日にするのであった。
このようにして「死んだふりをする」という表現が生まれた。だが、それがアメリカ英語に入り込むには時間がかかった。
1820年代初期になって初めて活字になった。それは、次の文章で使われた。「仮病を使ったり、特別な目的があってしらばくれることをpossumingという」
何年か後の1855年に次の文が現れた。「彼らにしらばくれておいてから、いっぱい食わせてやれば、臆病な彼らは、びっくりするだろう」
そのうちにこの表現は、政治にも使われるようになったが、これは、多くのアメリカのカラフルな言い回しがそうであるのと同じである。
その職業の性質上、政治家がよくやるのは、困ったり、深刻な事態から逃れるためにしらばくれることである-一つの方向に行くと見せかけながら、本当は、反対の方向へ行こうと思っている。
しらばくれる時が政治にはつきものであるが、大統領候補を選ぶ時は、特にそうである。
この時期に、政治家は、どんなに上手にしらばくれることができるか試される。
だれでも彼が候補者であることは知っている。どうやって、その事実を隠すのだろうか。
もちろん、仰向けになり死んだふりをして、その大きな栄誉には何の興味をも示さずにいれば、その間にほかの候補者は、通り過ぎ、消えて行く。
こうしたやり方の伝統的なものは、次のような声明を出すことである。「私は候補者ではない」「私は選挙に出馬しない」「私は立候補しない」などである。
だれもそんな声明を信用しないのだが、多くの人は、このショーを楽しんでいる。
“Playing possum”は、いつもそうである。
Reproduced by the courtesy of the Voice of America