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LITTLE WOMEN 若草物語 1-3

CHAPTER ONE PLAYING PILGRIMS 巡礼あそび 3

Alcott, Louisa May オルコット ルイーザ・メイ
AOZORA BUNKO 青空文庫
「おかあさんには、わたしたちが、じぶんのものを買っていると思わせておいて、びっくりさせてあげましょうよ。
メグ、明日の午後に買物にいかないと、
クリスマスのお芝居のことで、することがたくさんあるわ。」 ジョウは、せなかに手を組み、天井をあおいで部屋を歩きながらいいました。
 すると、メグがいいました。「あたし今度きりで、もうお芝居なんかしないつもりよ。あんなこと子供くさいもの。」
エミイ、さあ、いらっしゃい。おけいこしましょう。気を失うところをなさい。あんたは火ばしみたいにかたくなるんだもの。」
「しかたがないわ。
「こうやるのよ。
手を組み合せて、ロデリゴ! 助けて、助けて! と気狂いみたいにさけびながらよろけて部屋を横ぎるの。」ジョウは、ほんとに悲鳴をあげてやってみせました。
それにならってエミイもやりましたが、まるでぎこちなく、おお! という声だって、絶望どころか、身体にピンでもささった時のようでした、
ジョウががっかりしてうめくと、メグは笑いだすし、ベスもおかしがって、パンをこがしてしまいました。
「おけいこしてもむだだわ、そのときになって、できるだけになさい、見物が笑っても、あたしのせいにしてはいやよ、さあ、それでは、
今度はねえさんよ。」
 それからは、すらすらと進行しました、ジョウのドン・ペデロは長い科白をまくしたてて世をあざけり、
魔女のハーガーは、ひきがえるのいっぱいはいった釜をのぞいて呪文をとなえ、
ロデリゴは、おおしくも鉄のくさりをたちきり、ユーゴーは毒をあおいで苦しみながら死んでいきました。
「今までのおけいこのうちで、一ばんうまかったわ、」と、メグがいうと、
ベスも「ジョウねえさん、どうしてこんなりっぱなものが書けるの? それに、お芝居もじょうずだわ、」
「それほどでもないけど、
この『魔女の呪い』は、すこしはいいかもしれないわ、それはそうと、シェークスピアの『マクベス』がやってみたいのよ。」と、いって、
「目の前にちらつくは短剣か?」と、有名な悲劇役者のしぐさをまね、目の玉を光らし、虚空をつかんでいいました。すると、メグがさけびました。
「あら、フォークにさしてやいてるのは、パンじゃなくて、おかあさんのスリッパよ、」
 なるほど、スリッパが火にかかっていました。ベスは、おけいこを見て夢中だったのです。みんなは大笑いしました。
ねずみ色の外套を着て、流行おくれのボンネットをかぶったおかあさんも、娘たちの目には、この世でならびない、すばらしい人としてうつりました。
「今日はべつになんにもなかったの? 
おかあさんは、明日送りだす慰問箱の仕度でいそがしくて、御飯までに帰れなかったの。
ベス、どなたかお見えになった? 
メグ、かぜはどう? 
ジョウ、あなたはひどく疲れているのね、
さあさあ、みんな来て、キッスしてちょうだい。」
 マーチ夫人はぬれた外套をぬぎ、あたたかいスリッパをはき、ソファに腰をおろして、エミイを膝にのせ、多忙な一日の一ばんたのしいときを、たのしむのでした、
メグとジョウとベスは、さっそくとびまわって、食事の支度をし、すべてととのうと、みんなテーブルのまわりにつきました。
 さっと、あかるいほほえみが、みんなの顔をかがやかしました。
ジョウは、ナフキンをほうりあげてさけびました。「手紙だ、手紙だ、おとうさん、ばんざい!」
「ええ、いいお便りです。
おとうさんは、おたっしゃで、案じていたほどでもなく、
この寒い冬を元気でお過しなされそうですって。」 おかあさんは、そういって、まるで宝物でもはいっているように、ポケットをたたいて見せました。
さあ、もうゆるゆる食事なんかしていられません。パンを床に落したり、お茶にむせたりしてたいへんでした。
 
Copyright (C) Louisa May Alcott, Masaru Mizutani
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