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LITTLE WOMEN 若草物語 1-4

CHAPTER ONE PLAYING PILGRIMS 巡礼あそび 4

Alcott, Louisa May オルコット ルイーザ・メイ
AOZORA BUNKO 青空文庫
こういう非常のときの手紙は、つよい感動をあたえるものですが、
この手紙もそうで、危険に身をさらしたとか、つらいとかということは、すこしも書いてなく、
露営、進軍、戦況などがいきいきとした筆で書かれ、たのしく希望にみちていましたが、最後のところで、大きな感動をあたえました。
「娘たちに、わたしの愛とキスをあたえて下さい。
昼は娘たちのこと思い、夜は娘たちのために祈り日夜娘たちの愛情のうちに慰めを見出しています。
娘たちとあうまでの一年は、長く思われるが、待ちわびるそのあいだに、たがいに仕事につとめ、日々をむだにしないようにとお告げ下さい。
娘たちは、御身には愛すべき子供であり、忠実に義務をおこない、心中の敵と勇ましく戦い、みごとにうち勝って、わたしが凱旋のときには、以前にもまして愛らしく、誇りうるように生長しているように、出発のときに申し聞かせたことを、すべてよく記憶していると思います。」
 ここまでくると、みんな鼻をすすりはじめました。涙をとめることはできません。「あたしわがままだったわ、
おとうさんが失望なさらないように、いい子になります。」と、エミイがいいますと、
メグが、「みんないい子になりましょう! 
あたし見栄ばかり気にして、はたらくこときらいだったわ、もうやめるわ。」と、さけびました。
「あたしも、いい子になって、らんぼうなまねよすわ。どこかへ、いきたいなんて思わずに、家でじぶんのつとめをするわ。」 ジョウは、家でおとなしくしてるのは、敵一人や二人にたちむかうよりむずかしいと思いながらいいました。
 おかあさんは、ジョウの言葉につづいた沈黙を、快活な声でやぶりました。
「あなたたちが小さかったとき、「巡礼ごっこ」の遊びをしたことおぼえていますか? 
みんなせなかに、あたしの小布のふくろをしょって、帽子をかぶり杖をつき、まいた紙をもって、破滅の市の地下室から、日の照っている屋根の上までいき、そこで天国をつくるために、いろいろな美しいものをいただくくらい、うれしいことはなかったでしょう。」
 みんなは、そのときのいろんなできごとを思いだして話しましたが、エミイまでが、もうこんなに大きくなっては、あんなあそびできないというのをとがめて、おかあさんはいいました。
「いいえ、年をとりすぎてはいません。あたしたちは、まあお芝居をしているようなものです。
荷物はここに、道は目の前にあります。よいことと、しあわせを求める心が、たくさんの苦労や、あやまちのなかを通りぬけて、ほんとの天国、いいかえれば平和に導いてくれるのです。
さあ、小さい巡礼さんたち、今度はお芝居あそびではなく、本気でやって、おとうさんがお帰りになるまでに、どのあたりまで巡礼ができるか、やってみてはどう?」
「おかあさん、それで、荷物ってどこにありますの!」と、エミイが尋ねました。
「ベスのほかは、みんながじぶんの荷物が、なにか、いいましたよ。
ベスは、きっとなにもないのでしょう。」
「いいえ、ありますが、あたしのはお皿とはたきと、いいピアノをもっている娘をうらやむしがることですわ。」
「それでは、みんなでしましょう。巡礼ごっこというのは、よい人になろうと努めることね。」メグは、考えこむように、そういいました。
「あたしたちは、今夜は、絶望の沼にいたのね、すると、おかあさんが来て、あの本のなかで、救助がやったように、ひきあげて下すったんです。
だけど、掟の巻物を、どうしましょう?」 ジョウが、そういうと、
おかあさんが答えました。「クリスマスの朝、枕の下をごらんなさい。見つかるでしょうよ。」
 ばあやのハンナが、テーブルを片づけているあいだに、四人の少女たちは、あたらしい計画について話し合い、それからマーチおばさんの敷布をつくるために、四つの小さな仕事かごがもちだされ、せっせと針をはこぶのでしたが、
今夜はこのおもしろくない仕事に、だれも不平をいいませんでした。
 九時に仕事をやめて、いつものとおり、おわる前に歌を合唱しました。
メグは笛のような声で、おかあさんと二人で、この合唱隊をリードしました。
「きらりきらり、ちっちゃな、星さま」
と、まわらぬ舌でうたったころから、今だにつづけています。おかあさんは生れつきうたがじょうずなので、これが行事の一つとなったわけでした。
朝、まず聞えるのは、家のなかを、ひばりのようにうたうおかあさんの声で、晩に聞える最後の声も、おなじたのしいその声でした。姉妹たちはいくつになっても、そのなつかしい子守唄を、聞きあきるということはありませんでした。
 
Copyright (C) Louisa May Alcott, Masaru Mizutani
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