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LITTLE WOMEN 若草物語 9-3
Chapter Nine Meg Goes To Vanity Fair 虚栄の市 3
Alcott, Louisa May オルコット ルイーザ・メイ
AOZORA BUNKO 青空文庫
「まあ、ずるい、あたしのいうのは、わかいかたのほうよ。」と、ベルは笑いました。
「わかいかたって、いらっしゃいませんわ。ローリイなら、ローリイなら、まだ子供で、
いもうとのジョウくらいでしょう。あたしはこの八月で十七ですもの。」
「あんなりっぱな花をおくって下すって、ほんとにいい方ね。」と、アンニイが、意味ありげにいいました。
「ええ、いつでも下さるの。あたしの家のみんなに。あのかたの家に、いっぱい花があるし、あたしの家ではみんなが花がすきだからです。
母とローレンスさんとはお友だちでしょう。だから、あたしたち子供同志も遊びますの。」 メグは、この話を、うちきってくれればいいと思いました。
「ひな菊さんは、まだ世間のことにうといのね。」と、クララはうなずきながら、ベルにむかっていいました。
「まるで、まだあかちゃんね。」と、ベルは肩をすぼめました。
そのとき、マフォット夫人が、レースのついた絹の服を着てはいって来ました。「あたし、これから娘たちのものを、もとめにまいりますが、みなさん御用はありませんか?」
「ございませんわ、おばさま、ありがとう。あたしは木曜日には、あたらしいピンクの絹のを着ますし。」と、サリイがいいました。
「あなた、なにお召しになるの?」と、メグにサリイが尋ねました。
「昨夜の白いのを来ますわ。ひどくさけましたが、もしうまくなおせましたら。」
「どうして、かわりを家へとりにおやりにならないの?」と、気のきかないサリイがいいました。
「かわりなんか、あたしありませんわ。」 やっとメグがいったのに、サリイは人のよさそうな、びっくりしたふうで、「あれっきり、まあ、」と、いいかけましたが、ベルは頭をふって、サリイの言葉をさえぎってやさしくいいました。
「ちっともおかしくないわ。まだ社交界に出ていないのに、たくさんドレスこしらえておく必要ないわ。
ひな菊さん、いく枚あっても、お家へとりにいかせなくてもいいわ。あたしの小さくなった、かわいい青色の絹のが、しまってありますから、あれを着てちょうだいな。」
「ありがとうございます。でも、あたしみたいな子供には、この前のでたくさんですわ。」
「そんなことおっしゃらないで、あなたをきれいにしてみたいの。だれにも見せないように仕度してシンデレラ姫みたいに、ふたりでふいに出ていって、みんなをおどろかしたいの。」と、ベルは笑いながら、けれど、あたたかい気持ですすめるので、
木曜日の夕方、ベルと女中で、メグを美しい貴婦人にしあげました。
髪をカールし、いい香りの白粉をぬりこみ、唇にさんご色の口紅をぬり、空色のドレスを着せ、腕環、首かざり、ブローチなど、装身具でかざりたてました。美しい肩はあらわに、胸にばらの花はあかく、ベルも女中も、ほれぼれとながめました。
「さあ、みんなに見せてあげましょう。」と、ベルは、ほかの人たちのつめかけている部屋へ、メグをつれていきました。
メグは、ハイヒールの青い絹の舞踏靴をはき、長いスカートをひきずり、胸をわくわくさせながら歩いていきました。鏡がかわいい美人だと、メグにはっきり教えてくれたので、メグはかねての望みがかなえられた満足を味わい、じぶんから進んで、美しさを、見せびらかそうとさえしました。
ベルは、ナンとクララにむかって、「あたしが、着かえて来る間に、ナン、あなたは裾さばきと、靴のふみかたを教えてあげてね。ふみちがえてつまずくといけないから、
それから、クララ、あなたの銀のちょうちょを、まんなかにさして髪の左がわのカールをとめてあげてちょうだい。あたしのつくった、すてきな作品をだめにしちゃいやよ。」と、いって、じぶんの成功に、さも満足らしい顔つきで、いそいで出ていきました。
ベルが鳴りひびき、マフォット夫人が、使いをよこして、娘たちにすぐ来るように、告げたとき、メグはサリイに、ささやきました。「あたし、階下へいくのこわいわ。なんだか、とてもへんな、きゅうくつな気持で、それに半分、はだかみたいで。」「とてもきれいだからいいわ。
あたしなんかとてもくらべものにならない。ベルの趣味はすてき、
心のなかにその注意をたたみこんで、メグは無事に階段をおり、客間へ、しずかにはいっていきました。
この前の夜会のときと、まるでちがって、わかい紳士たちが、ちやほやして、いろいろ気にいるようなことを話しかけました。ソファに腰かけて、他人の品定めをしていた数人の老婦人たちは、メグに興味をもち、
Copyright (C) Louisa May Alcott, Masaru Mizutani