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The Adventures of Sherlock Holmes シャーロック・ホームズの冒険
The Adventure of the Beryl Coronet 緑柱石の宝冠 6
Sir Arthur Conan Doyle アーサー・コナン・ドイル
AOZORA BUNKO 青空文庫
「アーサーが寝室のドアを閉めたことが原因かもしれないと彼らは考えていました。」
大きな罪を犯そうとしている人間が、家族を起こすような音を立ててドアをバタンと閉めるなんてあり得ないでしょう。
それで、この宝石が消えたことについて、彼らは何と言っていますか?」
「彼らはまだ、見つけるという希望のもとに壁板や床板を鳴らしたり、家具を調べたりしています。」
「はい、彼らは並外れた力を見せてくれて頑張っています。
「そうであれば、ホールダーさん」ホームズは言った。「この事件はじつは、あなたや警察が当初考えていたよりもはるかに難解な問題であることが、いまやはっきりしたのではありませんか。
あなたには単純な事件に見えたでしょうが、私には極めて複雑に思えます。
あなたの理論でいくとどうなるか考えてみてください。
You suppose that your son came down from his bed, went, at great risk, to your dressing-room, opened your bureau, took out your coronet, broke off by main force a small portion of it, went off to some other place, concealed three gems out of the thirty-nine, with such skill that nobody can find them, and then returned with the other thirty-six into the room in which he exposed himself to the greatest danger of being discovered. あなたの息子さんはベッドから降りてきて、大きな危険を冒して、あなたの化粧室に行き、机を開けて宝冠を取り出し、その一部を力まかせに折り、それからどこか別の場所に行き、39 個の宝石のうち 3 個を誰にも見つからないように巧みに隠し、そのあと残りの 36 個を持って、発見されるという最大の危険にさらされる部屋に戻った、としましょう。
では、お尋ねします。このような考えは筋が通っていますでしょうか?」
「しかし、他にどのような考えがあるというのか?」銀行家は絶望の表情で叫びました。
「それを見つけ出すのが我々の任務です」とホームズは答えた。「それでは、ホールダーさん、よろしければ一緒にストリーサムに出発し、1時間ほどかけてもう少し詳しく調べましょう。」
友人は、彼らの調査に同行するよう私に強く勧めたが、私も非常にそうしたかった。というのも、ここまで聞いた話に好奇心と共感が深くかき立てられたからだ。
正直に言うと、銀行家の息子の有罪は、不幸な父親と同じように私は確信していたが、それでも私はホームズの判断を信頼していたので、皆が受け入れている説明に彼が満足していない限り、希望の根拠が何かあるはずだと感じていた。
彼は南部の郊外までほとんど一言も話さず、顎を胸に当て、帽子を目深にかぶって、深く考え込んでいた。
依頼人は、わずかな希望の光が見えたことで元気を取り戻したようで、自分の仕事について私ととりとめのないおしゃべりをし始めた。
短い鉄道の旅をして、さらに短い距離を歩くと、大金融家の質素な邸宅、フェアバンクに着いた。
フェアバンクは、道路から少し奥まったところに建つ、白石造りのかなり大きな四角い家だった。
正面には、ゆるやかな曲線を描く一対の馬車道が、雪に覆われた芝生をはさんで、入り口をふさぐ大きな二つの鉄製の門扉へと続いていた。
右側には小さな木の茂みがあり、その先には、道路から勝手口まで伸びる二つのきちんとした生垣の間の狭い小道があって、商人の出入りする通用口となっていた。
左側には馬小屋に続く小道があったが、それ自体は敷地内ではなく、あまり使われていない公共の通路だった。
ホームズは私たちをドアの前に立たせたまま、ゆっくりと家の周りを歩き、正面を横切り、商人の小道を下り、裏の庭を回って馬小屋の小道に出た。
ホームズが長くなったので、ホールダー氏とぼくは食堂へ入りので、彼が戻ってくるまで暖炉のそばで待った。
私たちが黙って座っていると、ドアが開いて若い女性が入ってきた。
彼女は中背よりやや高く、細身で、髪と目は黒く、その色は彼女のひどく青白い肌を背景にさらに黒く見えた。
私は女性の顔にこれほど死にそうな青ざめたものを見たことがないと思う。
彼女の唇も血色はなかったが、目は泣きはらして真っ赤になっていた。
彼女が静かに部屋に入ってきた時、私は今朝の銀行員ホールダー氏よりも深い悲しみをを抱いているように感じた。そして、より一層印象的だったのは彼女が強い性格で、自制心が抜群の女性であるとはっきりとわかったことだ。
彼女は私の存在を無視してまっすぐ叔父のところに行き、女性らしく優しく愛撫しながら彼の頭に手をかざした。
「アーサーを釈放するように命じていただけましたよね? お父さん」と彼女は尋ねた。
「いやいや、この件は徹底的に調査しなくてはならない。」
彼が何も悪いことをしていないこと、だからお父さんがあのようなひどい行動をとったことをきっと後悔すること、を私は知っています。」
たぶん、お父さんが疑ったことに腹を立てていたからかもしれません。」
「どうして疑わずにいられるのだ? 実際に彼が王冠を手に持っているのを見たのに。」
ああ、どうか彼は無実だ、という私の言葉を信じてください。
もう訴えを取り下げて、これ以上何も言わないでください。
私たちの愛するアーサーが刑務所にいると思うと、とても恐ろしいのです!」
「宝石が見つかるまではぜったい取り下げたりしない、絶対にだ、メアリー!
おまえはアーサーへの愛情のあまり、目がくらんでいて、私にどんな恐ろしい結果が降りかかるかに気づかない。
この件を隠蔽するどころか、ロンドンから紳士を連れてきて、もっと深く調べてもらう。」
Copyright (C) Sir Arthur Conan Doyle