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The Memoirs of Sherlock Holmes シャーロック・ホームズの思い出

The The Reigate Puzzle ライゲートの大地主 3

Sir Arthur Conan Doyle アーサー・コナン・ドイル
AOZORA BUNKO 青空文庫
「これが何かの約束だと仮定すると、」と警部は続ける。「このウィリアム・カーワン、正直者という評判があるとはいえ、強盗団の一味であるかもしれないという見立てももちろんありえてきます。
そこで待ち合わせ、戸を押し破る手助けまでして、そのあと仲間割れしたのかもしれません。」
「この文章、飛び抜けて面白い。」とホームズは気を集中させて紙切れを調べていた。
「予想以上に険しそうだ。」
と友人が頭を抱えると、警部は自分の事件がロンドンの有名探偵に響いたとにんまりする。
「今の話では、」とすぐにホームズは続ける。「強盗と使用人が通じ合っていて、これが渡された指示書かもしれぬとのことだが、独創的であながちありえない読みではないでしょう。
しかしこの筆跡から見えてくるのは――」
と友人は再び頭を抱え、そのまましばらく考え込んでしまった。
そして頭を戻すや、私は見て驚いたのだが、その頬には色が差し、その目は病む前と同じくらい輝いていたのだった。
以前の元気を取り戻して勢いよく立ち上がる。
「では、」と友人は言い出す。「いささかばかりこの事件を詳しく見させて頂きたい。
ここにはきわめて惹かれるものがある。
よろしければ、大佐、僕はワトソンくんとあなたに失礼して、この警部と回って、若干の思いつきをひとつふたつ正しいか確かめたいのですが。
三〇分もあれば帰って参りますので。」
 一時間半が経って、警部がひとりで戻ってきた。
「ホームズ先生は外の原っぱをあちこち歩いておられます。」というのが彼の話だ。
「例の屋敷へ、四人一緒に出かけたいと。」
「カニンガムさんのところへか?」
「そうです。」
「何のために?」
 警部は肩をすくめる。「それがさっぱりでして。
ここだけの話、ホームズ先生はまださほどご病気が治っておられないのではと。
本当に妙なことばかりなさって、ひどくご興奮を。」
「心配はご無用ですよ。」と私。
「変ななりふりながらも筋が立っている、と私はいつも理解しております。」
「たいていの人は、そんなの筋が変だと言いますね。」と警部はつぶやく。
「ところで先生は出かけたくてたまらないそうですから、大佐、整いましたら出るのが最善かと。」
 外ではホームズが行ったり来たりしており、顎を引いて両手とも下に突っ込んでいた。
「この事件、面白くなってきた。」と友人。
「ワトソン、君の田舎旅行も大成功だ。
魅力的な朝だった。」
「犯行現場まで行ってきたそうだが。」と大佐が訊ねる。
「ええ、警部とふたりで。それなりの下調べを。」
「何か成果が?」
「そう、実に興味深いものをいくつか見てきました。
具体的な話は道すがら。
まず第一に、不幸な男の死体を見ました。
確かに話通り撃ち殺されていました。」
「では、そのことを疑っていたので?」
「まあ、何事も調べるに越したことはありません。
捜査の甲斐はありました。
それからカニンガム氏とご子息にお会いして話を。そして逃げるときに犯人が壊したという庭の生け垣の正確な位置を教えてくれました。
それがたいへん興味深い。」
「ごもっとも。」
「次に哀れな男の母親に面会しました。
ですがこれといって得るものはなく。弱り切った老婆でしたので。」
「捜査結果はいかばかりで?」
「この犯罪が実に特異なものであると確信を。
この訪問のおかげで、いくらか晴れてくれるだろうと思います。
これはふたりのあいだでも一致していると思いますが、警部、死体の手にあった紙切れ、確かに死亡時刻が書かれているわけで、きわめて重要です。」
「きっと手がかりになるでしょう、ホームズ先生。」
「現に手がかりになっています。
とにかくこの覚え書きを記した男が、その時刻にウィリアム・カーワンを寝台から引っ張り出したのです。
だが紙の残りはどこにあるのか?」
「見つけられると思って地面を丹念に調べたんですが。」と警部は言った。
「それは死体の手から破り取られた。
なぜその何者かはどうしてもそれを手にしたいと思ったのか。
理由はそれが犯人を指し示すから。
そしてそれをどうしたのか。
懐に押し込んだ。おおよそのところ、死体に切れ端が握られたままなのを気づかずに。
その紙の残りが手に入るなら、謎も解決へとかなり近づくことになるのは明らかです。」
 
Copyright (C) Sir Arthur Conan Doyle, Otokichi Mikami, Yu Okubo
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