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The Memoirs of Sherlock Holmes シャーロック・ホームズの思い出
The Stock-Broker's Clerk 株式仲買人 3
Sir Arthur Conan Doyle アーサー・コナン・ドイル
AOZORA BUNKO 青空文庫
こう言い出されてむしろこっちがびっくりで、わかるでしょう。
『どうも。』と言ってから、『他の人はぼくをあんまり高く買ってくれませんので。あなただけです、ピナーさん。
今の口にありつくまでそりゃもう苦労のし通しでしたので。嬉しいです。』
これから申し出るのは君の能力に比してじゅうぶんと言えないが、モウソンのと比べれば光と陰。
『ハッハッ! ちょっとした賭に出てみてもいいくらいだ。君はそこへ絶対に行かない。』
『いかにも。その日までに、君は仏・中英金物株式会社の営業部長になっていることだろう。フランスの町や村に一三四の支店、その他ブリュッセルやサン・レモなどにもある。』
これは極秘で、なにぶん出資金はひそかに集められ、表にはできないほど良いものだからで。
実弟のハリー・ピナーが発起人で、分担額に従い社長として取締役会に参加しており、
自分がこちらへ渡っているのを知ってましたから、いい人間を手頃に見つけてくれと。
『基本給はそれだけだが、君の仲介した全取引に対して一%の歩合が支払われることになるから、この分が君の給与を上回るものと考えてもらっていい。』
もう頭がこんがらがっちゃって、椅子にじっと座ってられなくなったのです。
『モウソンでもらえるのはほんの二〇〇なのですけれど、モウソンはしっかりしています。
けれど正直、ぼくはそちらの会社について何にも知らない――』
『うむ、鋭い、鋭いな!』喜びの絶頂にあるみたいな大声でした。
さあ、ここに一〇〇ポンドの小切手がある。ともに働けると思うのなら、これは給与の前金として懐に収めてくれ。』
『明日の一時にはバーミンガムに。』と相手は言ったのです。
弟とはコーポレイション街一二六番地のBで会えるかと。そこに会社の仮事務所がある。
もちろん契約の確認が必要だが、ここでのやりとりで問題はないからな。』
二、三、ささいなことだが――単なる手続きとして――
それへこう書いてもらえれば。「私は、仏・中英金物株式会社の営業部長として、最低賃金五〇〇ポンドにて職務遂行することに、まったく同意するものである。」』
相手の言うままにすると、その紙は向こうの懐にしまわれたんです。
ぼくは喜びのあまりモウソンのことをすっかり忘れていたのです。
こちらも君のことでモウソンの経営者と一悶着あってな。
君のことを尋ねに出向くとひどく機嫌を悪くして、君を口車に乗せて業務やら何やらから離すのかと文句を。
「いい人材が欲しければそれ相当の額を支払うべきだ」と言った。
「やつはあんたが積んでもこっちの微々たるものを取るはずだ。」と向こうが言うから、
「五ポンド札を賭けてもいい、彼がこっちの申し出を受ければもう二度と本人からの知らせはないからな。」と。
すると向こうは、「はん! こっちはあいつをドブから拾ってやったんだ、
そうやすやすと手放しはしないさ」というのが言いぐさでな。』
絶対に書かないです、あなたがするなって言うんなら。』
Copyright (C) Sir Arthur Conan Doyle, Yu Okubo